クライアントの言葉を、そのまま受け取るということ

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カウンセリング

メンターとしてクライアントと向き合うとき
いちばん大切な姿勢は何でしょうか。

私はいつも、こう自分に問い直します。

その言葉を、ちゃんと聞いているか
自分の意味で受け取っていないか 

解釈は、ずれを生む

たとえば、クライアントが言います。

私は、前に進むのが怖いんです。

その瞬間に
ああ、挑戦が怖いんだな
と理解したつもりになるとしたら

それはもう
クライアントの世界とは別のところに
足を踏み入れてしまっています。

 

同じように見える言葉でも
人によって、まったく違う背景があります。

その人にとっての「前に進む」とは
誰かを置いていく感覚かもしれない
失敗の記憶かもしれない
過去の自分との別れかもしれない 

言葉という番地と、そこに広がる世界

クライアントが語った言葉は
まるで住所のようなものです。

でも大切なのは、その番地そのものより
その先に広がる町の景色、匂い、光、空気です。

つまり
その言葉という番地から広がる背景の方です。

そこには
その人が生きてきた感覚が
そのままの形で息づいています。 

概念を尊重するという聴き方

人の話を聞くとき
私たちは無意識のうちに、
自分の知っている言葉、意味、価値観で
解釈し直そうとしてしまいます。

でもそれでは
クライアントが開いたはずの扉を
別の鍵で閉じてしまうことにもなりかねません。 

言い換えない
要約しない
同じ言葉で、そのまま保つ

その丁寧さが、
相手の概念をゆるやかに外にひらいていく
メンタリングの力になるのです。 

メンターの仕事は「意味をつくること」ではない

メンターの役割は
相手の話をわかりやすくまとめたり
整理したりすることではありません。

言葉の奥にある世界を
そのまま保ちつづけること

その空間に身を置いて、
一緒に歩き、一緒に見て、一緒に感じること 

言葉という番地に宿る臨場感を
一切の解釈をせずに、
丸ごと受け取るとき

その人は、ようやく
自分の声が届いたと感じられるのかもしれません。

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