「個人の独立」という
一見すると遠いようで、実は今、私たち一人ひとりに
とても深く関わるテーマについて書いてみたいと思います。
この話は、国家や戦争の話ではなく、
むしろ、スマホの通知一つで感情が揺れ動く私たちの、
毎日の暮らしの足元の話です。
マルクスが見抜いた「資本による従属」
19世紀、カール・マルクスは『資本論』の中で
ある恐ろしい構造を描き出しました。
それは、
「人間の労働力」が商品として売買されている、という現実です。
労働者は時間を売り、
企業や資本家はその時間から利益を生む。
つまり、私たちは自分の人生の時間そのものを、
貨幣という抽象的な価値に変換しながら生きているのです。
マルクスはこれを「疎外」と呼びました。
自分の手で生み出したものなのに、
それが他者に奪われ、支配される。
これが資本の論理です。
現代経済学における新たな搾取のかたち
21世紀の現代
マルクスが描いた世界は、形を変えて続いています。
トマ・ピケティの『21世紀の資本』では、
「資本収益の成長は、労働収益を上回る」
という残酷な公式が提示されました。
つまり、お金持ちはますます豊かになり、
働く人は、いくら時間を費やしても報われにくい。
そしてGAFAをはじめとする巨大テック企業が、
私たちの検索履歴、購買履歴、思考傾向までも収集し、
行動の予測可能性という資源に変えて
利益を上げている現代。
私たちは「労働力」だけでなく、
「個人情報」や「注意力」さえも搾取されているのです。
情報空間における独立とは
ここで視点を変えてみましょう。
あなたの現実は、
誰が、どう設計していると思いますか?
テレビ、SNS、広告、教育、医療、通貨。
あらゆるものが、
あなたの「当たり前」をつくり、
無意識に“選ばされる人生”を生み出しています。
この構造を読み解く鍵が、
「情報空間」という概念です。
情報空間とは、
目には見えないけれど、
信念・臨場感・文化・記憶などの
非物質的な設計図が広がる世界。
ここに気づくことが、
個人の独立の第一歩なのです。
「自分の物語を生きる」という選択
個人の独立とは、
国家の外に出ることでも、
経済の仕組みを拒否することでもありません。
むしろ、自分の内側に主権を取り戻すことです。
何を信じ、
どんな世界を生き、
どんな未来を描くのか
その選択権を、他人や時代に明け渡さず、
自分で持つということ。
つまり、
他人の設計した人生のプロンプトに従うのではなく、
自分で「どんな人生を描きたいか」という問いに
正面から向き合うことなのです。
では、どうやって独立するのか?
具体的には、3つの領域があります。
1.情報空間リテラシー
メディアや教育のバイアスを見抜き、
無意識の正しさを検証できる目を持つ。
2.経済的独立
「時間=収入」という構造を抜け出す働き方を模索する。
知識資本、スモールビジネス、自営業などがその一例。
3.精神的独立
自分の信念を自分で決め、
感情の反応を自分で扱えるようになること。
真の自由とは、孤立ではなく創造である
独立というと、
誰にも頼らずに生きることのように思われがちですが、
それは孤立です。
本当の独立とは、
他者と関わりながらも、
自分の軸を手放さないこと。
社会や資本や時代を批判することではなく、
その中にいても「選べる」「描ける」自分を育てること。
私たちは、
ただ自由を与えられるのを待つのではなく、
自由を創る存在であっていい。
どうでしょうか?
この時代において、
「個人の独立」は一人ひとりにとっての
小さな革命かもしれません。
でもそれが、
世界を根っこから変えていく力になると、私は信じています。