批判は宇宙を狭める

私たちは日常の中で、つい他者を批判してしまうことがあります。
相手の欠点を指摘し、自分の方が正しいと主張する。
一時的には優位に立った気分になるかもしれません。

しかしその批判は、相手を傷つけるだけでなく、自分の内側の宇宙をも濁らせてしまいます。
なぜなら「一人一宇宙」という視点に立つと、批判は自分の宇宙を狭く限定する行為だからです。

一人一宇宙から見た批判

私が見ている世界は、私という意識が映し出している宇宙です。
その宇宙の中で、他者をどう扱うかは、私自身の宇宙の在り方を決定します。

もし他者を理解しようとすれば、私の宇宙は広がり、より豊かな奥行きを持ちます。
反対に、他者を批判して排除しようとすれば、私の宇宙は狭まり、色を失っていきます。

批判とは、相手を否定するだけでなく、自分の可能性を否定しているのと同じことなのです。

シェイクスピアの戯曲『オセロ』に登場するイアーゴは、他者を操るために批判と疑念を巧みに使います。
その結果、彼自身もまた破滅の道をたどっていきました。

イアーゴ的な批判は、相手を支配するように見えて、実際には自分の宇宙を蝕む毒となります。
批判で築かれた宇宙はやがて崩れ、自分をも飲み込むからです。

批判ではなく理解を選ぶとき、宇宙は大きく開きます。
他者を受け入れることは、自分の宇宙を拡張し、より多様な可能性を宿すことにつながります。

それは甘い理想論ではなく、哲学的に見ても実践的な態度です。
他者の宇宙を理解しようとすることは、自分の宇宙をより広く深くする行為だからです。

批判の連鎖は分断を生み、互いの宇宙を閉ざします。
理解の連鎖は共鳴を生み、互いの宇宙を響き合わせます。

どちらを選ぶかは、日々の小さな言葉や態度に表れます。
「批判は宇宙を狭める」
この一言を胸に置くだけで、私たちの世界は少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

次回はシリーズの最終回として、「検証できる哲学としての一人一宇宙」をテーマに、思索をどのように日常へ落とし込めるかを考えていきます。