引き寄せを頑張っても現実が変わらない理由。ゴール達成を妨げるホメオスタシスとは?

窓から街を見つめる人物。理想の未来と現状を考えるイメージ ゴール設定

引き寄せの法則を学んで、理想の未来を何度も思い描いている。願いが叶った自分を想像しているのに、現実はなかなか変わらない。そんな経験はありませんか?

実は心理学には、理想の未来を心地よく空想することが、かえって努力や成果と逆方向の関係を示す場合があるという研究があります。

未来を思い描くことは、ゴール達成に役立つのではなかったのでしょうか。私はこの話を考えるとき、未来を願うことと、未来を自分にとっての当たり前にしていくことを分ける必要があると思っています。

ここには、私が氣幸の講義でも重視しているホメオスタシスが関係してきます。

なぜ、人は引き寄せを信じたくなるのか?

引き寄せの法則が多くの人を惹きつける理由の一つに、「自分の人生を自分で変えられる」という希望があるのではないでしょうか。

仕事がうまくいかないときや将来に不安を感じているとき、「意識を変えれば現実も変わる」と言われたら魅力的に感じる人もいるでしょう。

2008年、心理学者のウィットソンとガリンスキーは、状況をコントロールできないと感じることと、実際には存在しないパターンを認識する傾向との関係を研究しました。コントロール感が低下した条件では、無関係な情報の中に規則性や意味を見いだす傾向が強まることが報告されています。

もちろん、この研究は引き寄せを信じる人を直接調べたものではありません。ただ、不確実な状況に置かれた人が出来事に意味を求める心理を考える手がかりにはなります。

「引き寄せた」と感じる出来事は、何によって起きたのか?

ある人が「新しい仕事が欲しい」と願っていたとします。数日後、知人から仕事の話が舞い込んできました。その人は「引き寄せが起きた」と感じるかもしれません。

私はその体験を頭ごなしに否定する必要はないと思っています。ただ、その仕事の話は願ったことによって生まれたのでしょうか。それとも、以前から存在した機会に気づいたのでしょうか。

願いを持ったことで本人の言動が変わり、知人との会話に影響した可能性もあります。同じ結果でも考えられる説明は一つではありません。

心理学者エレン・ランガーは1975年に「コントロールの錯覚」に関する研究を発表しました。人は偶然の結果についても、自分が影響を与えられると感じることがあります。

「願ったあとに起きた」という事実だけでは、「願ったから起きた」とは断定できません。これは引き寄せを否定するためではなく、物事を正確に理解するための視点です。

願いが叶わないのは、あなたの意識が悪いから?

私が引き寄せの説明で気になるのは、願いが叶わなかったときの考え方です。

「現実はすべて自分の意識が作っている」。もし、この言葉を文字どおり受け取ったらどうなるでしょうか。

病気になったことも、会社が倒産したことも、他人から理不尽な扱いを受けたことも、すべて自分が引き寄せたと考えることになりかねません。私は、そこまで自分の責任にする必要はないと思っています。

人生には自分の判断で変えられる部分もありますが、他人の意思や社会の仕組み、偶然によって左右される部分もあります。そこを無視してしまうと、うまくいかない理由を何でも本人の意識に求めることになります。

人生を良くしたくて学び始めたのに、学ぶほど自分を責めるようになる。それでは本末転倒ではないでしょうか。

成功を想像するだけでは、行動につながらないことがある

心理学者ガブリエーレ・エッティンゲンとドリス・マイヤーは2002年の研究で、未来についての「期待」と「空想」を区別しました。

期待とは、望ましい未来が実現する可能性についての判断です。一方、肯定的な空想とは、望ましい未来の場面を心地よく思い描くことです。

研究では、肯定的な期待は努力や成果と正の関連を示した一方、肯定的な空想は逆方向の関連を示しました。成功した場面を気持ちよく思い描いているからといって、実際の行動が増えるとは限らないのです。

ソファに座って考える人物。未来を思い描く場面のイメージ

例えば独立して成功した自分を想像し、理想の生活を送っている場面だけで満足してしまえば、事業を始める準備は進まないかもしれません。

ただし、この研究は「未来を想像すると必ず失敗する」と証明したものではありません。私は、未来を単なる願望として眺めているのか、自分が目指すゴールとして捉えているのかを分けて考えることが重要だと思います。

理想の未来を望んでいるのに、現状に戻ってしまう理由

独立して好きな仕事で生活したいと考えている会社員がいたとします。独立した未来を想像するとワクワクするのに、いざ準備を始めようとすると不安になる。

今の会社に勤め続けた方が安全なのではないか。独立して失敗したらどうしよう。そう考えて、結局いつもの生活に戻ってしまう。

夜の仕事場。慣れた環境から変わることを考えるイメージ

ここで私が注目しているのが、ホメオスタシスです。生理学では、体温など身体の状態を一定の範囲に保つ調節機能を指します。

私の講義では、この概念を現状維持やゴール設定との関係にも応用しています。人は慣れ親しんだ状態を当たり前と感じ、変化することに抵抗を覚える場合があります。

もちろん、変化を避ける理由には経済的な事情や現実的なリスクもあります。ただ私は、ゴール達成を考えるうえで「何を当たり前と感じているか」という視点が重要だと思っています。

現状のホメオスタシスを弱め、ゴール側を強くする

では、理想の未来を実現するためにはどうすればよいのでしょうか。

私が氣幸の講義で重視しているのは、現状のホメオスタシスを弱め、ゴール側のホメオスタシスを強くするという考え方です。

ここでいうホメオスタシスは、生理学的な調節機能そのものではなく、講義で扱う応用的な概念です。

氣幸で目指す「当たり前の基準」の変化
現状側

今の生活が当たり前

現状維持の傾向を弱める

→
ゴール側

目指す未来を新しい基準に

ゴール側を強める

※氣幸の講義における応用的な概念を示した図解。生理学的な変化を実証する図ではありません。

例えば独立することが特別な挑戦だと感じている人にとっては、会社員として働き続けることが当たり前になっています。

一方、独立して事業を運営している未来を、自分が目指す自然な状態として捉えられるようになったら、日常の判断基準が変わる可能性があります。

休日の過ごし方を考えるときも、将来の事業に必要な経験を積むという選択肢が生まれるかもしれません。もちろん休息が不要になるという意味ではありません。

私はこうした変化を、現状側からゴール側へとホメオスタシスの基準を移していくこととして捉えています。現状を無理やり壊すのではなく、ゴールを達成している未来の自分を新しい基準にしていくわけです。

ゴール側の臨場感を高めるとは?

ここで重要になるのが、臨場感です。臨場感とは、その未来をどれほど現実味のあるものとして感じられるかということです。

成功した経営者の生活を眺めて「こんな生活ができたらいいな」と思うだけなら、その未来は憧れの対象かもしれません。

しかし、独立して仕事をしている未来をゴールとして設定し、その未来を基準に現在の状況を見直すとしたらどうでしょうか。今の働き方はそのゴールにつながっているのか。これまで重要だと思っていたことを、これからも優先する必要があるのか。

私は、ゴール側の臨場感を高めることには、こうして現在の認識を見直す意味があると考えています。ただし、未来を鮮明に想像するだけで必ず現実が変わるわけではありません。

氣幸では、情報空間に働きかける

「考え方を変えることが大切なのはわかった。でも、長年当たり前になっている状態を変えるのは難しいのでは?」そう思う人もいるでしょう。

そこで、私が講義で伝えているのが、氣幸による情報空間への働きかけです。氣幸には、情報空間を扱うための独自の技術があります。

その技術をゴール設定と組み合わせることで、現状側のホメオスタシスを弱め、ゴール側のホメオスタシスを強めることを目指します。

ただし、氣幸によって生理学的なホメオスタシスが変化することや、ゴール達成が保証されることが科学的に実証されているわけではありません。ここで説明しているのは、私が講義で扱う理論と実践方法です。

引き寄せと氣幸の違いは、どこにあるのか?

引き寄せの法則と呼ばれる考え方にもさまざまな説明があり、すべてを一つの定義で語ることはできません。

ただ、願いを強く思い描くことによって望む出来事が起こるという説明を聞いたことがある人も多いでしょう。

一方、私が氣幸とゴール設定を組み合わせるときに重視しているのは、願いの強さだけではありません。現状の外側にゴールを設定し、未来のゴールを基準に現在の自分の認識を見直していくことです。

未来のゴールを基準に、現在の選択を見直す
ゴール設定

未来の基準

→

認識の見直し

何を重要と捉えるか

→

選択・行動

現実の条件と照合

※講義の考え方を整理した模式図。ゴール設定だけで成果が保証されるという意味ではありません。

未来を思い描いて満足するのではなく、未来の自分にとっての当たり前を変えていく。ただし実際の行動や学習が必要になることもありますし、自分では変えられない外部条件も存在します。

あなたは、どちらの未来を当たり前だと感じていますか?

あなたが実現したい未来は、今のあなたにとってどのような存在でしょうか。いつか実現したら嬉しいと思う憧れの未来でしょうか。それとも、これから自分が進んでいく未来として現実味を持って感じられているでしょうか。

理想の未来を何度も思い描いているのに、日常の選択がほとんど変わっていないなら、現状の方が当たり前になっているのかもしれません。

未来を願い続けるのではなく、未来のゴールを基準にして、今の自分の当たり前を変えていく。私は、そこに引き寄せとゴール設定を考えるうえでの大きな違いがあると思っています。

参考文献

Whitson, J. A., & Galinsky, A. D. (2008). Lacking Control Increases Illusory Pattern Perception. Science, 322(5898), 115–117.

Langer, E. J. (1975). The illusion of control. Journal of Personality and Social Psychology, 32(2), 311–328.

Oettingen, G., & Mayer, D. (2002). The motivating function of thinking about the future: Expectations versus fantasies. Journal of Personality and Social Psychology, 83(5), 1198–1212.

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