「やってみたい。でも、私には無理だと思う」。新しいことを始めようとした瞬間、そんな言葉が頭に浮かぶことはありませんか。
まだ挑戦していないのに、過去の経験や今の能力を物差しにして、未来の可能性を決めてしまう。私がゴール設定の講座で大切にしているのは、まさにこの判断を見直すことです。
そこで知っておきたいのが「エフィカシー」という考え方。単に自信をつける話ではありません。自分に何ができると考えるか、その評価が行動の選択とどう結びつくのかを、研究と氣幸の両方の視点から整理します。
エフィカシーとは?自己効力感の意味
エフィカシー(self-efficacy)は、心理学者アルバート・バンデューラが体系化した「自己効力感」と関係する概念です。ある状況で必要な行動を自分が実行できる、という見込みや判断を指します。
たとえば「私は価値のある人間だ」と感じることと、「初めての講座でも、準備して人前で話せる」と判断することは違います。前者は自己価値に関する評価、後者は特定の行動に対する効力感です。
私がゴール設定でエフィカシーという言葉を使うときは、現状の外側のゴールに向かう自分の能力を、どう評価しているかという意味を重視します。現時点で必要な技術がすべて備わっている、という宣言ではありません。
自信・自己肯定感との違い
日常語の「自信」は幅広い意味で使われます。一方、自己効力感は「何を、どんな条件で行うか」という具体的な行動に結びついた判断です。ある分野では高くても、別の分野では低いことがあります。
だから、今は自信がないという感覚だけで、未来のゴールを取り下げる必要はないのです。まだ経験がないことと、将来もできないことは同じではありません。
なぜ「できると思えるか」が行動に関係するのか
バンデューラは1977年の理論論文で、自己効力感の予期が、行動を始めるかどうか、どの程度努力するか、困難の中でどれほど続けるかに関わるという枠組みを示しました。自己効力感の情報源として、達成経験、他者の行動を見た経験、言葉による働きかけ、身体や感情の状態を挙げています。
ここで注意したいのは、1977年の論文は理論の提示であり、「強く信じればどんな願いも実現する」と証明した研究ではないという点です。できるという評価は、実際の経験や行動と結びついて育ちます。
1982年の論文では、自己効力感と行動、感情的な反応との関係について、複数の研究をもとに論じています。行動を変える際、能力そのものだけでなく、自分が能力を使えると見込むことにも意味があるのです。

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現状の外側のゴールを、今の能力で採点しない
ゴールを考えるとき、私たちはつい「今の自分なら何ができるか」から出発します。すると、目標は過去の実績を少し延長したものになりやすい。
しかし、現状の外側のゴールとは、今の延長線だけでは描けない未来を選ぶことです。今の自分の評価でその未来を小さくしてしまったら、そもそも現状の外側を見ていません。
たとえば、教える経験がない人が「自分の技術を必要な人に伝える講師になる」というゴールを持ったとします。現時点で話し方や講座運営を知らないのは事実です。だからといって「講師にはなれない」という結論にはなりません。
必要なのは、ゴールを下げることではなく、そこへ向かうために学び、試し、経験を重ねることです。
今の能力だけで可能・不可能を決めない
エフィカシーを育てるには、どんな行動が役立つのか
1981年、バンデューラとシャンクは、算数の学習に困難や苦手意識のある子どもを対象に、近い小目標を設定する条件、遠い目標を設定する条件、目標を設定しない条件を比較しました。その研究では、近い小目標を用いた条件で、学習の進み方や自己効力感、算数への内発的関心などに有利な結果が報告されています。
これは「大きなゴールを持ってはいけない」という意味ではありません。研究で比較されたのは、特定の学習課題での目標の置き方です。人生全体のゴールを小さくする根拠に読み替えるべきではないでしょう。
私がおすすめするのは、目指す未来はそのままに、今日取り組む行動だけを具体的にする方法です。講師になりたいなら、まず誰に何を伝えたいのかを一枚の紙に書く。次に、短い説明を声に出してみる。その経験から、次に必要なことが見えてきます。
できたことを事実として受け取るのも大切です。「たまたまうまくいった」で終わらせず、何を準備し、どう行動したから前に進めたのかを振り返る。その積み重ねが、自分への評価を支えます。

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氣幸の「場の移動」は、エフィカシーの言い換えではない
ここからは、私が教えている氣幸の話です。心理学の自己効力感と、氣幸で扱う情報空間や「場の移動」は、同じ言葉に置き換えられるものではありません。
氣幸の理論では「一人一宇宙」という考え方を大切にします。一人ひとりの宇宙は互いに重なり合うのではなく、一点で接している。その接点が物理空間です。これは、他人と同じものを見ても感じ方が違う、という心理的な説明だけに還元できる話ではありません。
また、場の移動は、単に前向きな言葉を使ったり、気分を変えたりすることを意味しません。情報空間における場そのものを扱う、氣幸の実践に関わる概念です。次元の階層という見方も含めて、私が講座で伝えている独自の理論体系に位置づけられます。
自己効力感の研究から学べるのは、行動を始めるときの自分への評価や経験の積み重ねです。一方、氣幸ではそれにとどまらず、どの場からゴールを捉えるかを扱います。両者を混同せずに学ぶことで、それぞれの意味がはっきりします。
今日からできる、ゴールとエフィカシーの扱い方
まず、今の実力や周囲の評価をいったん脇に置いて、「本当はどうなりたいのか」を書いてみてください。すぐに実現方法が見つからなくても構いません。
次に、その未来にいる自分なら、今日何に手をつけるだろうと考えます。全部を変える必要はありません。今できる一歩を決め、実際にやってみる。
行動した後は、うまくいったことだけでなく、次に工夫できることも確認します。結果を責める材料にするのではなく、次の経験につなげるのです。具体的な行動の決め方は、実行意図とメンタル・コントラストの記事でも紹介しています。
私が伝えたいのは、「自信がつくまで待つ必要はない」ということ。未来を決めることと、今日の行動を始めることは、今この瞬間から両立できます。
氣幸を知る入口として、無料診断もご活用ください
ゴール設定や情報空間の話に関心を持ったなら、氣幸の学び方を知るところから始めてみてください。自分がどんなテーマに関心を持っているかを整理する入口として、無料氣幸診断はこちらからご覧いただけます。
参考文献・一次資料
Bandura, A. (1982). Self-efficacy mechanism in human agency. American Psychologist, 37(2), 122–147.(自己効力感と行動・感情に関する論考)

