未来の自分が想像できないのはなぜ?「未来自己の連続性」とゴール設定

木々に囲まれた道が奥へ続く風景。未来の自分と現在の選択を考える記事のアイキャッチ ゴール設定

5年後、10年後の自分を思い浮かべてください。そう言われても、どこか他人の話のように感じることはありませんか。

将来はこうなりたい。そう考えているのに、今日の行動となると別のことを優先してしまう。私は、このずれを単純に意志の弱さだとは考えません。

心理学には「未来自己の連続性(future self-continuity)」という研究テーマがあります。今の自分と未来の自分を、どれくらいつながった存在として感じているか。今回は、その研究を入口に、現状の外側のゴールと氣幸の考え方まで掘り下げます。

未来自己の連続性とは?未来の自分が遠く感じる理由

未来自己の連続性とは、現在の自分と将来の自分の間に、どの程度のつながりや共通性を感じるかという心理学上の概念です。未来の自分も確かに私だと感じる人もいれば、まだ会ったことのない別人のように感じる人もいます。

ここで扱うのは、未来の自分を正確に予言できるかどうかではありません。将来の自分との心理的なつながりを、今どのように捉えているかです。

たとえば、数年後の健康のために生活を整えることも、将来の仕事のために学び始めることも、利益を受け取るのは今すぐではありません。目の前の楽しさと、未来の自分の利益がぶつかるとき、このつながりの感覚が関係するのではないか。研究者たちはそう考えました。

未来の自分との「つながり」をどう感じるか
連続性を弱く感じる
今の私  ······  未来の私
未来の自分を遠い他人のように感じる
連続性を強く感じる
今の私 ━━━━ 未来の私
今の選択が未来の自分につながると感じる
概念図:情報空間ラボ/数値や実験結果を表す図ではありません

2009年の研究でわかった、未来の自分と意思決定の関係

Ersner-Hershfieldらは2009年の論文で、現在と未来の自己のつながりを測る指標を使い、将来の報酬をどう評価するか、貯蓄とどのような関係があるかを検討しました。

3つの研究を通じて、未来の自分との連続性を強く感じる人ほど、実験課題で将来の報酬を大きく割り引かずに評価する傾向が見られました。また、年齢や教育歴を考慮した分析でも、連続性の指標と蓄積された金融資産との関連が報告されています。

重要なのは、この研究が主として関連を調べたものであり、「未来の自分を想像すれば必ず貯金が増える」と示したわけではないことです。私が注目したいのは、今の判断が未来の自分と切り離されていないという視点です。

未来の自分を目で見ると、選択は変わるのか

2011年にはHershfieldらが、年齢を重ねた自分の顔をコンピューターで表現し、その姿と接する実験を報告しました。参加者は仮想現実などを使って未来の自分の姿を見た後、お金をどのように配分するかなどを選びました。

4つの研究では、未来の自分の姿に接した条件で、将来のために資源を回す選択が増える傾向が報告されています。ただし、ここで扱われたのは主に実験場面の選択や仮想的な資金配分です。実際の長期貯蓄が増えたとまで言い換えることはできません。

写真一枚で人生が変わるという話ではありません。それでも、遠い未来の自分を具体的に感じられるようにする工夫が、目の前の選択に影響する可能性を示した点は興味深いところです。

未来の自分を想像することと、ゴール設定は同じではない

ここで、私が教えているゴール設定との違いを整理しておきます。未来自己の連続性の研究は、現在と未来の自分のつながりの感じ方を扱います。一方、私が大切にするのは、現状の外側にゴールを設定することです。

今の自分から見て、無理なく想像できる将来だけを選んでいたら、ゴールは現状の延長線に収まりやすくなります。たとえば、今の仕事を続けながら少し収入を増やす未来は思い描けても、まったく違う分野で人を育てる自分は想像しにくいでしょう。

だからといって、想像できない未来を捨てる必要はありません。先に『本当はどうなりたいのか』を決める。その未来を選んだ自分なら、今日何を大切にするのかと問い直すのです。

心理学の研究は、このゴール設定の方法そのものを検証したものではありません。私は研究から得られる知見を参考にしつつ、ゴールの選び方は別の問題として扱っています。

未来の自分に手紙を書く、具体的な実践

未来の自分を考えるとき、私は単なる願望の羅列ではなく、日常の場面を具体的に書く方法をおすすめします。

たとえば、3年後の自分がどこで朝を迎え、どんな仕事に向かい、誰とどのように関わっているのか。まだ実現していない未来なので、最初から正解を出す必要はありません。書いている途中で胸が少し高鳴るような場面があれば、そこを丁寧に描いてみてください。

机のノートに文章を書き込む場面。未来の自分に手紙を書く実践のイメージ

写真:Cathryn Lavery / Unsplash

次に、その未来の自分から、今の自分へ短い手紙を書いてみます。「あのとき始めてよかったことは何か」「やめてよかった習慣は何か」。未来から現在を振り返る形にすると、今日の選択を別の角度から考えられます。

これは私が提案する振り返りの方法であり、上記の2011年の実験と同じ手続きを再現したものではありません。

未来から今日を考える
現状の外側のゴール
本当はどんな未来を選びたいか
↓
未来の自分から、今日の私を見る
未来を現状の延長だけで判断しない
↓
今日できる行動を一つ選ぶ
行動後に経験を振り返り、次の一歩を考える
実践の整理図:情報空間ラボ(KOU)

行動が止まるときは、未来を小さくする前に

未来が見えなくなると、私たちはついゴールそのものを下げてしまいます。けれども、未来を描くことと、そのために必要な技術が今あることは別です。

もし講師になるというゴールを選んだなら、今日の一歩は、人前で5分間話してみることかもしれません。どんな人に何を伝えたいのかをノートに書くことでもいい。大きなゴールを、今日の小さな課題と取り違えないことです。

行動に移す段階では、実行意図とメンタル・コントラストの考え方も役立ちます。『いつ、どこで、何をするか』を決めることで、考えるだけで終わらせずに済みます。

氣幸の「場の移動」は、未来を想像するだけの技術ではない

ここからは、私が教える氣幸の理論についてお話しします。未来自己の連続性は心理学で扱う概念ですが、氣幸の「場の移動」は、未来の自分を思い浮かべて気持ちを切り替えることの別名ではありません。

私が伝えている「一人一宇宙」の理論では、一人ひとりの宇宙は互いに重なり合わず、一点で接しています。その接点が物理空間です。これは単に『人によって見え方が違う』という認識の説明に置き換えられるものではありません。

そして、場の移動と情報空間の書き換えでは、今の状態を前向きに解釈し直すことだけでなく、情報空間における場そのものを扱います。次元の階層という考え方も、ここに関わってきます。

心理学の研究をそのまま氣幸の仕組みの証明に使うつもりはありません。研究は研究として正確に理解する。そのうえで、氣幸で扱う場やゴールの意味を深めていくことが大切です。

今日の自分から未来を測るのではなく、未来から今日を選ぶ

今の延長では思いつかない未来に惹かれたとき、すぐに『無理だ』と結論づけないでください。まだできないことがあるのは当然です。

未来の自分を具体的に思い描き、そこから今日の選択を見直す。そして、現状の外側に置いたゴールを小さくせず、一歩ずつ行動していく。私が伝えたいのは、この順番です。

ゴール設定や情報空間の考え方に興味を持った方は、無料氣幸診断もご覧ください。あなたが今、どんな学びに関心を向けているのかを整理する入口として活用できます。

参考文献・一次資料

Ersner-Hershfield, H., Garton, M. T., Ballard, K., Samanez-Larkin, G. R., & Knutson, B. (2009). Don’t stop thinking about tomorrow: Individual differences in future self-continuity account for saving. Judgment and Decision Making, 4(4), 280–286.(未来自己の連続性と貯蓄の関連)

Hershfield, H. E., Goldstein, D. G., Sharpe, W. F., Fox, J., Yeykelis, L., Carstensen, L. L., & Bailenson, J. N. (2011). Increasing saving behavior through age-progressed renderings of the future self. Journal of Marketing Research, 48(SPL), S23–S37.(年齢を重ねた自己像と意思決定の実験)

アイキャッチ写真:Francisco Gonzalez / Unsplash。図解2点:情報空間ラボ(KOU)による説明用のオリジナル図。

コメント

タイトルとURLをコピーしました